日々是好日

そのさびをつれづれなるままに

義実家の話

親族名簿とバリケード

葬儀では親族が一人ずつ呼ばれて玉串を捧げることになるが、それがそのまま席順になる。納棺の時は名前の読み上げもないし、エイコさんの兄弟姉妹はまだ来ていなかった。 通夜が始まる少し前から、遺族控室にエイコさんの兄や姉らしき年寄り軍団が集まり始め…

子供は五人

一晩明けて、納棺の儀。喪主で妻のエイコさん、長男である我が旦那、長男妻の私、長女のアイコ一家、次女ケイコ、故人の姉夫妻、故人妹のサトヤマ一家、それからエイコさん側のヨウコ一家、ユウコ夫妻、という順番で故人の顔を簡単に拭いて行く。 余談だが、…

故人と宗教

義父は兄弟五人のうち妹サトコと二人で、先祖代々続いて来た墓を守る要員として、本家に貰われた。本家当主が亡くなった後、義父は本家が代々信仰する某神教の大きな祭壇を引き取り、その宗教の支部に通うなどの行事を割とマメにこなしていた。 義父は知人か…

写真が無い!

私と旦那が自宅に戻ったのは、旦那がほぼ徹夜だからというだけが理由ではない。葬儀会社の会員証を持って来なくてはならないし、葬儀の演出のために必要な細々としたものがあった。 一つは、故人の経歴を紹介するための基本情報。何せ密では無かった親子だし…

仮通夜メンバー

私の実家で行った祖父の仮通夜では我が両親は行動に制約もなく、普通に自室で就寝した私が言うのも何ではあるが、比較的楽そうだった。しかし、私達は葬儀会場に義父を一人置いておくわけにも行かず、誰かが残らなくてはならない。 葬儀の打ち合わせ後、私達…

孫一同に纏わる静かな戦い

義父が亡くなったことを私の実家に知らせると、会場の脇を飾るスタンドの花輪を出すよう頼まれた。葬儀社のカタログによれば、12,600円。高い! 祖父母の葬儀を思い返すと、その子供達(私の父母世代)からは花輪、そして「孫一同」として祭壇横に飾る何かが…

二つの形式

葬儀会場に着き、担当者との打ち合わせ。とにかくお金がないので簡素に、家族葬にする、とエイコさんが宣言した。一般葬で大赤字になった義父の兄の例があったからだ。しかし、資金が無いならば一般葬の方が良い、と担当者に説明されて成程とも思い、一般葬…

もやもや感

葬儀社が病院に到着してから間もなく、私達が居る一階ロビー片隅に位置するエレベーターから担架が降りて来た。流石にその後は正面玄関ではなく夜間緊急窓口の通路から裏口玄関に出たが、全身を白い布で覆われた、いかにも御遺体、が目の前に現れたら大抵の…

形態を考えつつ業者選び

私の実父の兄は老年離婚した後、実父の援助と生活保護を受け、近年亡くなった。同じ市内に住みながらも実家を出ている私には、彼が墓に入った後で、亡くなったとの報告があった。故人は兄弟全員から自堕落な生活ぶりを蔑まれていたので、実父と隣町に住む弟…

罪悪感

私の中には特別な感情はない。悲しいという気持ちが沸き起こって来ないので、涙も出ない。正直なところ、安堵しているくらいだ。それについての罪悪感はある。しかし、今はむしろ、罪悪感から解放されたのだ。 義父が税金の世話になって以降、役所から定期的…

プライド

旦那が義父と二人暮らしをしていた、小学生の頃の話だ。泊まりの仕事で義父が不在の時、部屋の暖房が切れた。元々お金がないので灯油の買い置きをしておらず、近くに住むサトヤマ家に相談するのも、お金のことが気掛かりで出来なかった。ガスは点くので、時…

擦れ違い

電話は嫌いだ。相手の都合も考えず、一方的に喋る輩が何と多いことか。ビジネスにおいても。もっとも「今お時間よろしいでしょうか」なんて聞かれても「よろしくない」と断るわけだから、セールスの電話の場合は一方的に話すのが正しいのかもしれない。 私は…

召集

朝起きて手早くシャワーを浴び、すぐに電話を確認した。着信は無い。パン一枚を食べ、美容室の予約時刻まではかなり余裕があるのに、身支度もばっちり整った。気持ちがまだ落ち着かないまま、とりあえず新聞を広げていた。 そこに自宅の電話が鳴った。いつも…

一人きりで眠れぬ夜

生体情報モニタの警告音が鳴ったからといって、そう焦るものでもないらしい。義父の脈拍は大体低めの90前後、高くて120、熱が出ると150から160前後で警告音が鳴り続けるが、看護士が氷枕を取り替えると徐々に落ち着くといった感じ。 義父の誕生日の後から三…

賑やかな誕生日

前回の見舞いから間もなくして、エイコさんより連絡が来た。義父の便秘が解消されず、腹部に溜まった水をこれまでも時々抜いてはいたが、今回は1200ccと多く、本人の体調が悪くて食事もままならない。そのため、栄養を点滴に切り替えた、と。一度点滴に替え…

架橋となる

義父の見舞いで手持ち無沙汰になるのは、実娘である義妹達も同様だった。家庭環境が複雑な故、元々交流が少ない。更に金銭トラブルもあって、流石に有耶無耶になっているが、義父とは疎遠にしていた。 入院後の義父の状態にあまり変化が無かったため、私と旦…

筆談での会話

改めて説明すると、義父は右半身に麻痺がある。右手と右足は自分の意志で動かせず、右目も見え難い。合わせて左半身の機能も低下している。 そのため、歩くことが出来ない。人の助けを借りて車椅子に移り、動く方の手で進めることは出来る。週に何度かリハビ…

頑固対策

病院から家族に集まるよう要請があったのは、癌の告知以降、これが二度目。義父は元から酷い便秘らしい。加えて腫瘍が邪魔しているものだから、食べ物の消化も下剤の効きも悪い。前夜は詰まりに詰まって、トイレに何時間も篭っていたという。排出に体力を使…

狼少年の絶望

義父の高熱が三日も続いている、食事量が減った、ウイルスに感染してお腹を壊している……など、変化があればエイコさんから連絡が入る。ただ、私が知りたいのは一点だけだ。今すぐ見舞うべき状況なのかどうか。 確かにそこから急変する可能性が無きにしも非ず…

年齢差婚とバツイチ婚

実娘ユウコの結婚について、エイコさんが気に入らない点は、相手の婚姻暦と年齢差だけではなかった。その後、私もユウコ夫婦に会う機会があったのだが、確かに何だかなー……という感じで。 義父の見舞いで居合わせた時、義父は少し疲れ気味だった。 「今日は…

一人暮らしと彼女の愚痴

義父が退院出来る見込みは限りなく薄かった。この先、エイコさんは一人暮らしとなる。年齢に関わらず、一人暮らしは心配だ。彼女の実娘のうち一人は結婚して遠方に住み、もう一人のユウコは比較的近い場所で一人暮らしをしている。生活費の問題もあるし、再…

借金と大樽の漬物

自分と息子、サトヤマ家に預けた二人の娘。二世帯分の財布が必要だったため、義父は殆ど貯金出来なかったらしい。しかし、一人暮らしをしていた亡兄を含めた三世帯に正月のおせち、皆で食べれるようにと大樽で作る漬物、仕事仲間への菓子など、差し入れを惜…

戸籍謄本と謎の経歴

結婚する時に旦那の戸籍謄本を取った。両親は離婚しているし、義父と旦那の実母もそれぞれ幼少の頃に養子縁組をしていたりで、彼等の枠だけ記述がやたらと長い。 婚姻届には、父母の名前を書く欄がある。提出時に訊ねたところ、空欄にしておいた旦那母欄には…

分相応に出来ない叔母夫妻

私はクレジットの分割払いやキャッシングは利用しない。お金を借りてまでして、何かが欲しいとは思わない。車や趣味関連で百万円超の買い物をしたことがあるが、蓄えの中から全て即金。まあ、これが「家」ならば流石に話も変わって来るのだろうが……。とにか…

義妹の独立騒動

叔母のサトヤマ家で育った義妹達は双子で、高卒後の就職も同時。アイコは勤務地で一人暮らし。もう一人の義妹ケイコは個人で仕事を始め、サトヤマ家での生活を継続することになった。途中、結婚話が持ち上がったりもしたが、まだ若いからと叔母に反対された…

オトウサンオカアサン

義父とエイコさんは、我が旦那と義妹二人が成人した後、結婚した。兄妹は彼女と同じ屋根の下で暮らしたことがないし、縁組もしていないので、継母という感じは全くない。彼女は単に、義父を筆頭とする「同じ戸籍に載っている(いた)人」だ。 旦那達は彼女の…

義実家物語~プロローグ 告知

入院中の義父のことで、エイコさんから電話が来た。病院から話があるので、家族に集まって欲しいのだとか。妻である彼女は簡単には聞いているのだろうが、あえて問い返さなかった。一言で済む筈なのに勿体ぶるから、相手をするだけ時間の無駄だ。彼女と話せ…