日々是好日

そのさびをつれづれなるままに

賑やかな誕生日

前回の見舞いから間もなくして、エイコさんより連絡が来た。義父の便秘が解消されず、腹部に溜まった水をこれまでも時々抜いてはいたが、今回は1200ccと多く、本人の体調が悪くて食事もままならない。そのため、栄養を点滴に切り替えた、と。一度点滴に替えると、通常食には戻れないらしい。

 

数日後、様子を見に行った。弱った目には光が眩しいのでカーテンは勿論のこと目も常に閉じ、ほぼ寝たきりで、腕に点滴のチューブが繋がれている。その前の時よりもまた痩せ、首や手足は骨がくっきりという風体だ。但し、腹部に水が溜まる症状には変わりがないので、元から貫禄のある腹だけは膨れたまま。

 

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更に数日後が、義父の誕生日だった。エイコさん、私と旦那、義妹アイコの家族五人、義妹ケイコ、エイコさんの実娘ユウコ夫妻、もう一人の実娘ヨウコと子供二人も休日を利用して遠方から掛け付けていた。全員がベッドの周りに居るわけにはいかないから、病室と待合室とで何度も入れ代わり立ち代わり、賑やかな一日になった。

それを見た看護士が、義父にちょっかいを出して来る。
「オオタさん、何歳のお祝いなのさ」
義父は弱々しく人差し指と中指を立てる。数字の2か、ピースか。
「何? 2? 20? ハタチ? ハタチになったのかい」
義父は頷く。それはない、と私達は笑う。年齢に「2」という数字は関連していない。
「このジェスチャー、何を言いたいんだろう」
「俺、今日が誕生日なんだぜ、イエーイ! ……のVサインかな」
アイコが勝手にアテレコを付けて、皆がまた笑う。

義父本人にちゃんと聞こえているのか、どこまで意識がはっきりしているのかも実は怪しい。何か言われれば、適当に相槌を打っているだけのようにも見える。周りが盛り上がっているのに合わせ、自分の中にも可笑しみが込み上げて来るようだ。心拍数を測る機械――生体情報モニタが時折、警告音を鳴らす。

そう、誕生日の前日から義父の身体には生体情報モニタが取り付けられ、看護士の詰所でも状態を随時確認出来るようになっていた。

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