日々是好日

そのさびをつれづれなるままに

擦れ違い

電話は嫌いだ。相手の都合も考えず、一方的に喋る輩が何と多いことか。ビジネスにおいても。もっとも「今お時間よろしいでしょうか」なんて聞かれても「よろしくない」と断るわけだから、セールスの電話の場合は一方的に話すのが正しいのかもしれない。

 

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私はまだ電車で移動中だ。そこに旦那からの着信があった。「車内での使用は認められているが、通話はご遠慮下さい」がルールだ。相手が諦めないので、携帯電話はマナーモードでブーブーと振動し続けている。あまりにも煩わしいので、強制的に「切」で止めた。「今、電車で向かってる」とメールで送信しようと打ち込み始めたが、その短い時間すら待てないようで、再びすぐブーブーと鳴った。私は電話の反応は速い方だから、しつこく掛け続けるのも分かる。

でも、出られない状況に置かれているという可能性も考えてよ! て言うか、今時のヒトなんだからメールにしようよ! 旦那はメールを打ち込むのはまどろっこしいからと、何でもかんでも電話する人だ。

観念し、応答した。私が声を発する前に、旦那は怒り、意味の分からないことを言っている。私は焦っているので、その内容が全く耳に入らなかった。
「だから! 今、向かっている最中だから待って!!」
それが改めて危篤を知らせる内容であっても、全ての終了を告げるものであっても、電車内で聞いても、病院に到着してから聞いても、今更同じだ。

「向かってるって何処だよ! もうちょっとで着くのに!」
「着くって……何処に!」
「家に決まってるだろ!」

何で家……。病院に居るんじゃなかったの!? 旦那は私とは擦れ違いで、自宅の最寄駅に到着しているようだ。
「知らないの?! 病院から電話来たの。危険、って! とりあえず、すぐ電車に乗って! 病院に戻って! 詳しくはメールするから」
電話を切り、少し長めのメールを送信し、病院の最寄駅で待ち合わせることにした。こんな時なのに旦那は昨夜出掛けた際に千円しか財布に入れておらず、電車の往復で殆ど残っていない筈だった。

 

駅に着き、とりあえず美容室にキャンセルの電話を入れた。20分待って、旦那が到着した。無言でタクシー乗り場に行き、乗り込んで一息ついてから互いの状況を話し始めた。

義父の状態には変化がなかったので、午前八時過ぎに病院を出たのだと言う。旦那は昨日出掛ける時に自宅の鍵を持たなかったため、私が美容室を終わる頃に合わせて自宅に戻る筈だったが、美容室に行く前に捕まえて自宅に帰ろうと思ったのだとか。また、義妹達は九時から十時頃に来ると話していたので、もうすぐだから良いかな、と。旦那が自宅最寄駅に着いたのは九時頃は、私が駅に向かっている時でもあった。駅直結のスーパーで天麩羅を買っていたのだと見せてくれた。朝なのに天麩羅……そして何だかんだで実は金持ってたんかい……という突っ込みもそこそこに、タクシーが病院に到着した。

病院から電話があったのは、九時よりほんの少し前。もう一時間が経とうとしていた。

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