日々是好日

そのさびをつれづれなるままに

罪悪感

私の中には特別な感情はない。悲しいという気持ちが沸き起こって来ないので、涙も出ない。正直なところ、安堵しているくらいだ。それについての罪悪感はある。しかし、今はむしろ、罪悪感から解放されたのだ。

義父が税金の世話になって以降、役所から定期的に書類が届いていた。生活資金の補助をする義務があり、補助をするしないに関わらず、こちらの資産などを書き出さなくてはならない。義務のある旦那だけではなく、家族も含めての、つまり私のも、である。書類を記入する煩わしさ、面倒見切れない後ろめたさだけではなく、私達は貯金をして良いのかという疑問も、これからは持たなくて済む。

他には、特にこの数ヶ月は何度も病院を訪れることになったから、交通費も嵩んでいた。時間も費やした。緊急時に備えて気持ちがどこか張り詰めていたけれど、もう必要なくなったのだ。旅行にだって気兼ねなく行ける。

 

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私と義妹達はベッドを囲み、ただひたすら義父を見守っていた。
「まだ温かいんだよね。オトーサマ、ちょっと失礼~」
義妹の一人が寝巻きの胸元を少し開き、手を触れた。ちょうど一時間が経過した頃。確かに温かく、それでも通常よりは大分低い。

少し軽い調子の義妹達もまた、同じ血が流れていない私など比較対象にするのは適切ではないが、悲しみつつも安堵が見え隠れしている。放心状態から抜け切れない旦那とは違い、落ち着き払っている。

 

というか……いつまでここに居るのやら。病室は三人部屋だ。他二人も義父同様に寝たきりで重い症状らしいとはいえ、カーテンで目隠ししてあっても、同室で起こっていることには気付くだろう。全くの他人の最期に居合わせるなんて、しかも明日は我が身かもしれない状態なのに、私だったら絶対嫌だ。他でやってくれ、さっさと移動してくれ、と思う。私の知るドラマか何かでは、集中治療室か何かでベッドは一台だけぽつん、もしくは霊安室でご対面、というイメージなのだが。

旦那は職場の上司に電話をしたり、それが終わったと思えば、これまた職場の別の仲間にも電話したりで、病院の玄関外と病室とを行ったり来たりしている。エイコさんも病院側の説明や手続きで右往左往。旦那の動きが一段落したところで、ユウコが到着した。それを機に枕元を譲り、私と義妹達は病院一階の待合室に移動した。

皆が悲しんでいる時間、私は別のことに充てるとしよう。

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