日々是好日

そのさびをつれづれなるままに

写真が無い!

私と旦那が自宅に戻ったのは、旦那がほぼ徹夜だからというだけが理由ではない。葬儀会社の会員証を持って来なくてはならないし、葬儀の演出のために必要な細々としたものがあった。

 

一つは、故人の経歴を紹介するための基本情報。何せ密では無かった親子だし、エイコさんが再婚した頃にはこの世に居なかったし、というわけで、故人の出身地や両親の名前すら「○○だった……と思うよ」と誰に聞いても自信無さげなのだ(記憶は合っていた)。これは私と旦那が結婚した際にコピーしておいた戸籍謄本があるので、持って行くことにした。

もう一つは、遺影にする写真。勿論初めにエイコさんに尋ねたのだが、「写真に映るのが好きじゃない人だったから無い」と言い切られてしまった。歳を重ねてからの再婚同士だと、そんなものかもしれない。でも、エイコさんは自宅にある荷物を思い返そうとする素振りもなく、自分はそれどころではないから誰かがやって、と端から丸投げ。

と言われても、我が家にあるのは、私達の結婚式の時の写真のみ。義父が倒れる数年前だ。それより後となると、アイコが「うちの子供達と映っているのが何枚かあったかも」と言うので、それぞれ探して来ることにした。

 

しかし、アイコの手元にあった写真は、横を向いていたり、子供の頭で顔が少し隠れていたりで、正面を向いた顔が映っているのは、かろうじて一枚。親指サイズの顔はぼやけ、眩しそうに目が細められている。

私の方も選び出すのに苦労した。結婚式の写真は主役ばかりで、他はそれぞれ数枚ずつしか映っていない。プロの写真屋を入れていなかったので、内輪で気ままに撮ったものから、使えそうなのは一枚のみ。プリントサイズにすると、顔の大きさは小指の先くらい。フィルムカメラで撮影したもので、その後ネガをデータ化して貰っていた画像を、CD-Rディスクにコピーして持って行った。

 

その二点をプロに見て貰い、私が持って行った画像を遺影にすることになった。背景が結婚式の金屏風で白ネクタイを締めているが、修正は簡単らしい。それぞれ写真屋が持って来たカタログから選択する。

出来上がった遺影は、残念ながらやはりぼやけていた。元データで義父の顔が占める割合が十数分の一程度なので、A3判(くらい?)に伸ばして修正を入れても限界がある。会場で遠くから見ると気にならない程の仕上がりは流石にプロの仕事、という感想を私は持ったが、エイコさんは「プロのくせに下手糞ね」と怒っていた。いや、何もしてないアンタが文句言うな!

 

尚、エイコさんは「無い」と断言していたが、後の遺品整理でスナップ写真がちゃんとあった。しかも断言したのは忘れたのか悪びれもせず、それを出して来た。義父が倒れてから約十年もあり、押入れの奥の大量のアルバムの存在は知っていたのだから、探しておいて欲しかった。

 

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余談。私の叔母は夫が倒れてからすぐという状態でもなかったのに、翌日には近所の葬儀会社で会員手続きを済ませ、夫の所有物の処分を進め(仲が悪いわけではなく、むしろ仲睦まじい)、自分のと夫のとを立派な額縁に入れた揃いの遺影まで用意していた。周りも苦笑していたが、それは流石にやり過ぎ……

ただ、葬儀費用には遺影作成代も大抵含まれているし、叔母が用意した遺影は祭壇に対して小さ過ぎるため結局使わなかった。同じ写真から新しく遺影写真を作り、その後の叔母宅には同じ表情の故人の顔が二つ並べて飾られているのであった。

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