日々是好日

そのさびをつれづれなるままに

故人と宗教

義父は兄弟五人のうち妹サトコと二人で、先祖代々続いて来た墓を守る要員として、本家に貰われた。本家当主が亡くなった後、義父は本家が代々信仰する某神教の大きな祭壇を引き取り、その宗教の支部に通うなどの行事を割とマメにこなしていた。

義父は知人からエイコさんを紹介された際、宗教事に付き合うことを、結婚の条件としたらしい。とはいえ、自宅にある祭壇に花や供物を添えたり、墓参りする程度で、面倒なのは施設で年に数度催される行事に参列するくらいだ。宗教が違うくらいで、私の実両親が檀家になっている仏寺に関わる密度とそう変わらないレベルだと思う。

エイコさんは信仰を強制されていないので、単独では基本的に宗教面はノータッチ。むしろ及び腰。というより、完全逃げ腰。祭壇のある家で暮らしたことのない我が旦那や義妹達も同様である。しかし、義父が間違いなく希望するであろうし、彼の葬儀は某神教で執り行ってあげたい。

 

話は戻るが、病院から葬儀会場に移って日取りを決めた後、その場ですぐ某神教の支部長に連絡を入れた。義父が生まれ育った小さな町で少数宗派、義父と支部長は同年代、50年来の親友でもある。見舞いにも度々訪れ、誰も顔を合わせていなかったが亡くなる二日前にも来ていたらしい。支部長は翌日から遠方へ長期出張する予定があり、まるで引き留めたかのようなタイミング。所用を取り止め、彼自らが祭儀を引き受けてくれることになった。

そして、支部長を交えての話し合い。宗教的に必要となる供物を教えて貰うのと、支部長に払う金額についてだ。支部長は義父やエイコさんに余裕が全く無いこと、エイコさんが某神教とそれに深く関わる支部長を毛嫌いしていることも、直接言われたわけではないが態度から十分承知している。

エイコさんは改めて金が無いことを宣言し、祭儀は支部長(斎主)一人で行って欲しいと依頼した。お付きの人(祭員)が居れば余分に祭祀料が必要になるからだ。
「で、支部長さん、幾らでやって貰えますか」
早く決めて、次の行動に取り掛かりたい。ぐずぐずしている暇はないから、単刀直入に尋ねるのも悪くない。が、何処か喧嘩腰。他人様に物事を頼むならば、もう少し態度がどうにかならんか?

支部長は目を閉じ、じっとしている。沈黙が続く。大袈裟ではなく、一分以上の熟考だ。あまりにも長いので、エイコさんの言葉をスルーしたいのか、彼女から折れて額を明確にしろ、と無言で抗議しているかのよう。いや、実は本当にそうだったりして。
「10万でやりましょう」
「では、納骨と合わせて15万でお願いします」
これだけの会話で手打ちとなったらしい。

 

当日になって分かったことに、祭儀は細々とした手順があり、参列者50人規模だと、支部長一人での対応は無理があった。それを見越して、支部長は予告せずに祭員を一人連れて来た。義父は貢献者だったし、祭員も故人と顔見知りで来たがっていたという事情もあった。彼はまだとても若いが故人を慕っていたらしく、祭員なのに祭儀中に涙を流して覚束なくなる程だったので、そんな人に見送って貰えて有難いことだったと思う。

しかし、エイコさんは案の定、勝手に連れて来て! と愚痴を言っていた。包んだのは打ち合わせ通りの15万円だけだったくせに。やれやれ……

 

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尚、そもそもの系統も違うがSではない。

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